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第41話「ゴースト夏祭りの怪」

【モルグ市魔神博物館】

モルグ市魔神博物館
日本に"魔神"と呼ばれる怪異が出現するようになり幾年。惑羽イチトと真道シガヤは某博物館の出向職員となる。『回収員』として魔神を殺し、死体を手に入れることがふたりの仕事。展示物の確保のため、そして平和な日常のため、ふたりのまどうは魔神を殺す!


【本編】

小説家になろう / カクヨム / Nolaノベル / NOVELDAYS
番外編:『難しい問題』を解けば出られる部屋

【etc】

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作品紹介はクロスフォリオにて!漫画もある
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#盛愚市民こばなし #ハバキ
『十字路に拾う神あり』

「おーい枕木!」
「松尾さん!?」

自動販売機の隣に立ってタバコをふかしていたのは野球部の先輩だ。
ポジションはキャッチャー。
前に会った時より、もっと太った気がするとハバキは考えたが口には出さない。

「今ヒマか? うちの会社来いよ」
「ダイタンなお誘いっすねぇ。ヒマしてるように見えました? あいにくオレも仕事中なもんで」
「ヒマに見えたんだけどなぁ。うち、そこらの会社よりいい給料出すぜ?」
「『博物館』よりお金、出ます?」

ハバキのなんてことない問いに、松尾は困った顔を浮かべてタバコを指先で弄びだす。

「あー……ちょっとそれは厳しいわ。オマエ、なんでハクブツカンなんかに行ったんだよ。金か? 金だよな。うん……」
「松尾さんの会社でオレ何ができます?」
「配送とか」
「今似たようなことしてるんで」
「そっか。枕木、バケモノに襲われる前に転職しろよ? 死んでからじゃ、うちは雇ってやれないぜ」
「あっはは、幽霊になって顔出ししますわ」
「幽霊か……」
「松尾さんオバケ苦手でしたっけ」
「なめんじゃねぇーわ。チビ連れてどんだけお化け屋敷に通ったと思ってんだよ」

一瞬、ハバキの脳内に、モルグ市総合病院の暗い廊下がよぎって。

「……それじゃ、松尾さんオタッシャで」
「体こわすなよー」

松尾さんには分かんないよなと、その足でハバキは病室のバケモノに会いに行く。

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#盛愚市民こばなし #イチト
『採集』

耳がふたつ。
舌はひとつ。
どちらにも、沢山のピアスが輝いている。

「なんてものを」
父は顔面蒼白、弟から震える手でそれを受け取る。
「なんてものを、自分の弟に持たせるんだ?」

声は揺れる。裏返る。
分かっている。
これは本物の、人の身体の一部。

惑羽イチトは、何も返答ができない。

彼の背負うカバンには、ピアスが埋め込まれた肩と、腹部の一部が入っている。
これだけしか持って帰って来られなかった。

「ピアス」
混乱で渦巻く頭では、ろくな言葉が出てこない。
「つけてて良かった」
姉の行為を肯定する。

「帰ってこられたから」
付けている箇所だけだ。

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#盛愚市民こばなし #シガヤ
『真道報告書』

「詳細に書きすぎていて、逆に疑う者もいる」

「いやぁ末恐ろしいガキだ」
「何を参考にしたんだって?」
「あれに似てるな。山岳遭難の」
「ああ」
「もう退院したんだっけ」
「あれは病院で書いたのか?」
「ノートパソコンの持ち込みまでして」
「……真道志願夜って」
「確か3年前の」
「6年前じゃなかったか?」
「どんな気持ちであんなの書いたんだろうなぁ」
「気持ち悪い」
「吐くならトイレでな」
「行ってくる」
「行ってらっしゃい俺は先に出とくから……聞いちゃいないか」

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#盛愚市民こばなし
『魔神のややこ』

自分の姉は、異界に落ちてからおかしくなったのです。

おかしくなった箇所は数百にのぼりますが、とりわけわかりやすい箇所をあげるなら、2点でしょうか。おなかと、あたまです。

姉は魔神とまぐわい子を宿したようです。
今年で妊娠3年目。
おなかはずっとまるいまま。

姉はこのことで、価値観が変わりました。
魔神信奉者には成り果てた。
自分が特別な存在だって、言ってはばからない。

いっそ殺してあげられたら、と母は泣いていました。
殺すって、あいつごとか?と父は聞くまでもないことを尋ねてきます。
募るふたりの危機感を自分は見逃し、とうとう3年。

「その子の父はどこにいる?」
「今もまだ異界にいるの」

自分の手にはカンニングペーパーがありました。
これには有識者の協力で得た、強大な呪文が書かれています。
これまで姉と話すことは避けていました。
話したらこちらが狂いそうだったから。

「その子の異母きょうだいがどれだけ居るか聞いている?」
私が告げれば、信奉者(シンパ)の目の色が、分かりやすく変わります。
「その子の父親、虫ケラだって孕ませるよ」

副読本、魔神報告書。
十時型魔神の醜悪な物語。
そのひとつに姉が含まれます。
ページは千以上にわたります。
甚大な数であり、微細な被害です。

「ソレの母たる姉さんは、何番目の夫人にあたるの?」
姉さん、今日日、魔神に種付けされる人間の雌の数を、ご理解しておりますか?

カンニングペーパーが濡れて読めなくなりました。
自分の涙と姉の血。
悲しいことに効果は絶大。

ところで誰かの支援がないと自分は、姉をあたまがわるいままにしていたのでしょう。
生まれない子を腹に留める姉のように、ゆっくりと表面を撫で続け。
誰かに手を伸ばさないとそこで立ち止まりっぱなし。
つまるところ、似たものきょうだいであったというわけです。

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#盛愚市民こばなし
『不幸は多弾』

愛する家族が死にました。
我が家に『ドアー』があったそうです。
帰宅している間に、ドアーから出現した魔神に殺されました。
父と、母と、弟が死にました。

魔神が死にました。
近所の人が殺してくれたからです。
父と、母と、弟の遺体は葬儀場に運ばれましたが、
魔神の死体はそのままです。

私は殺されかけました。
母の運命の相手?を名乗る男に襲われそうになりました。
魔神の死体がそのままだったので、男はそれに足を引っ掛けて転びました。
その拍子に持っていた包丁が男の腹に刺さりました。
男は母の名をずっと呼んでいました。
なんだか母が気持ち悪く思えてきました。
死んでしまった人に対して、なんてことを考えるんだと私は嫌になりました。

弟は私と半分しか血が繋がっていないことがわかりました。
母の運命の相手?との子だったようです。
弟の笑顔が私とまったく違った理由がようやくわかりました。
なんだか弟が気持ち悪く思えてきました。
死んでしまった人に対して、なんてことを考えるんだと私は嫌になりました。

魔神の死体はそのままです。
片付ける気力がなくて、私はずっとホテルに泊まっています。
今日、地主さんが怖い人たちを連れて部屋を訪れてきました。
家を手放すつもりならあの死体をどうにかしろと言ってきました。

近所の人がお金を請求しに来ました。
魔神の殺害料だそうです。

父の会社の人がお金を請求しに来ました。
父が会社のお金を着服していたそうです。
なんだか父が気持ち悪く思えてきました。
死んでしまった人に対して、なんてことを考えるんだと私は嫌になりました。

霊媒師さんに声をかけられました。
私の住んでいた家は呪われた土地だそうです。
お金を払えば不幸を退けてくれるそうですが、
魔神の死体は消してはくれないそうなので断りました。
私は嫌になりました。

受験に落ちました。
あれから家にも学校にも行っていないので当たり前でした。
私は嫌になりました。

お金が無くなりました。
私は嫌になりました。

父方の祖父母が、私は嫌になりました。
声をかけたお巡りさんが、私は嫌になりました。

死体を貪っていたカラスが、私は嫌になりました。
私を押し倒した男が、私は嫌になりました。

小学校の時に私を無視した子が、私は嫌になりました。
崖の下に居た魔神が、私は嫌になりました。
ドラッグストアの店員が、私は嫌になりました。

担任の先生が、私は嫌になりました。
市役所の職員が、私は嫌になりました。
青い目の魔神が、私は嫌になりました。
魔神被害者にインタビューする研究者が、私は嫌になりました。

私は嫌になりました。

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