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第41話「ゴースト夏祭りの怪」

【モルグ市魔神博物館】

モルグ市魔神博物館
日本に"魔神"と呼ばれる怪異が出現するようになり幾年。惑羽イチトと真道シガヤは某博物館の出向職員となる。『回収員』として魔神を殺し、死体を手に入れることがふたりの仕事。展示物の確保のため、そして平和な日常のため、ふたりのまどうは魔神を殺す!


【本編】

小説家になろう / カクヨム / Nolaノベル / NOVELDAYS
番外編:『難しい問題』を解けば出られる部屋

【etc】

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作品紹介はクロスフォリオにて!漫画もある
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#盛愚市民こばなし #イチト #惑羽家
『弟一號』

その呼び方、囚人みたいだからやめなよ。
姉の十真はそう言って兄の九重を嗜めたが、兄妹の権力差の違いか、兄が言うことを聞くことはなかった。

「来い、弟一號!」
兄はふたりに増えた弟の区別をつけるため、一途をそう呼ぶ。
いちごう、と、いちと、に大きな違いはないように思えたので、幼い一途は文句をつけなかった。

「おれがみうだったら、さんごうだった?」
兄に問いかけると、バカ笑いされた。
「お前は俺の弟1人目だから、どんな名前でもいちごうだよ!」
「そうなんだ」
「そうだぞ。例えるなら、お前は俺がいる限り、次男だろ? 長男には、なれないだろ?」
「うん」
「それと一緒!」
「そうなんだ」
「……お前ちゃんと理解してる?」
「そこそこ」
「ほんとか〜?」

イチトはのんびりやだからな〜と兄が言う。
姉も「のんびりやっつーか、何考えてるかわからないっつーか……」と呆れている。

階下から妹が泣く声が聞こえた。それに負けじと弟が泣く声も続く。
「下、荒れてるねぇ。手伝い行く?」
「いーやパパ上とママ上に任せようぜ」
「まぁ、ここで大人しくしてる方がいいかもね」

姉がローテーブルで書き進める課題の紙、その名前欄に兄はシャーペンでらくがきをする。
「あ、勝手に書くな! あと私、この呼び方だいっきらいなんだからやめて!」
妹一號、の字は『號』が歪んで酷いものだ。
姉は文句を言いながら消しゴムで消していく。
「筆圧強っ……全然書けてないし。無理して使うなバカなんだから」
「バカじゃねーし! 普通の『号』だとしょぼいだろ。爺ちゃんに教えてもらった漢字だぞ? 由緒正しき表記だ」
「ムダに難しい字にするの、暴走族みたい」
「あ!? 前は囚人みたいって言ってたくせに! 一体どっちなんだよ」
「はぁ? どっちにしろ悪役みたいでイヤなんですけど」

姉は真面目な性格で、そういうものを好まない。
たまにテレビでやっている警察の特集では決まって苦労している警察官を応援している。

「イチトぉ、おねえちゃんひでぇな。お前のこと、悪役だって!」
「悪いことしてない……」
「なー! してないよなー!」
「もう、てきとう吹き込むのやめて!」

イチトにとって、呼び方なんてどうでもよかった。
どれだけ家族が増えても、互いに扱いが粗雑になることも、混合されることもなかったから。
惑羽一途として、家族の一員だったから。

「……ミウ、泣きやまねぇなぁ」
階下の声はイチトの意識から消えていたが、兄は気にしていたようだ。
「よし、母さん助けに行きますか! 行くぞ一號!」
階下の様子を兄は立ち上がるとイチトの手を引っ張る。
「なんだかヒーローみたい」
背の高い兄を見上げながらイチトはこぼす。
その言葉に兄はにんまりと満足そうに笑った。

「聞いたかトーマ! 俺は正義側だ!! 悪はお前だけだ!」
「イチト! ココノエを調子乗らせない!」
「わかった」
「イチト! トーマの言うことは聞くな!」
「わかった」
「お前は素直でいい子だ! 持つべきものは弟だな」
「二度と調べ物手伝ってやらないから」
「ああ〜ごめんなさいトーマさまぁ〜!」

きょうだい3人は階下へ向かう。
弟を取り合うように、それぞれがイチトの手を取りながら。

イチトはふたりの手の温度を好ましく思っていたが、あいにく仏頂面のこどもだったので、兄と姉は「ほらイチトが虚無顔してる」「どっちの命令が有効か脳内処理してんじゃねぇの」と言い合っていた。

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